皆さんは熊本が誇るお菓子をいくつ知っているだろうか?私は、正直、熊本に来るまでは全く知らなかったが、熊本県民が愛してやまない超有名ローカル菓子があるのだ。その名も「誉れの陣太鼓」。柔らかくしっとりとした求肥で品の良い甘さの大納言あずきを包んだ熊本の銘菓だ。製造・販売しているのは、熊本市で67年続く老舗の「お菓子の香梅」という会社。この「誉れの陣太鼓」が絶妙にうまいのだ。一度食べるときっと好きになる。かくいう私も一度食べて虜になった。食べたことがなかったのに、食べた後になぜか懐かしさを感じた。きっと古き良き時代の味なんだろうな。
そんなお菓子を製造・販売する「お菓子の香梅」は、今年(2016年)4月に起きた熊本地震の被害を受け、工場が操業停止に陥った。長年親しまれていた陣太鼓が食べれないと熊本県民はがっかりしていた。しかし、この度、6月14日にようやく工場が仮復旧し、20日から「陣太鼓」をはじめとする一部の商品の販売を再開したのだ。
熊本の銘菓:お菓子の香梅、6月20日(月)より「誉の陣太鼓」販売再開
動画「誉の陣太鼓の販売再開」 篇15秒
材料にこだわり抜いて出来上がった陣太鼓
陣太鼓の誕生は遡ること58年前の昭和33年。「お菓子は平和の使者」という考えで「くつろぎのごちそう」を作り、多くの人々の心を満たしたいという想いから作り出されたお菓子だ。原材料を見るとわかるのだが、そのこだわりが現れているのだ。なんと使っている材料はたったの7品目のみ。添加物を一切使わず作り上げている。また、「良い水で良いお菓子を作りたい」との想いで、それまで3か所に分散していた工場を阿蘇の伏流水が使える熊本県阿蘇地方の西原村一ヶ所に集約したのだ。もちろん、使うのは阿蘇山の恵みを存分に受けた伏流水。材料にこだわり、添加物を一切使わず、さらに水も阿蘇の名水を使う徹底ぶり。陣太鼓が美味しく熊本県民に長く愛される理由がここにあるのだと感じた。
被害を受けたお菓子の香梅:西原工場
「おいしいお菓子を作りたい」という熱い想いの一心で、県内の工場を阿蘇の西原村に集約したお菓子の香梅。ところが、その西原村は、今回の熊本地震で震度7という未曽有の大地震に見舞われた。もちろん、香梅の工場も甚大な被害を受け、お菓子の製造が全くできない状態になり、県内すべての店舗の営業ストップを余儀なくされた。
被害状況は、建物の被害ももちろんだが、工場内には隆起や陥没がたくさんあり、機械はほぼ全て倒れていたそうだ。さらに最悪なことに阿蘇の伏流水を貯めておく受水槽が破損したの一番の打撃だった。お菓子作りには水は必要不可欠で、最大で180トンほどの水を使うそうだ。その水すべてが流出したのだ。また同時に電気、ガス、水道のすべてが止まってしまっていた。こうなってはお菓子作りは完全に不可能だ。営業どころか肝心のお菓子が作れないのだ。中でもあんこを作る施設が一番ひどい被害を受けたそうだ。香梅のお菓子の大半にはあんこが入っている。その主力のあんこを作る施設がダウンしてしまっては、すべての商品を作ることができなかった。そこで、まずはあんこ製作所を復旧させることに。建物自体を修復すると時間がかかりすぎてしまうと判断した社長は、建物の中に屋根を作り、衛生管理ができるようにし、建物の中に仮設製餡所を作ったのだ。本来であれば、陣太鼓を一日に10万個製造できる工場だったのだが、現在は仮設工場での製造のため、4レーンのうち2レーンしか稼働できていないそうだ。また、水も仮のタンクを使って製造しているので、一日約35000個が限界だそうだ。
今後は、復旧した製造ラインを止めることなく、別に工場を建てて本格的な稼働を目指すとのこと。
これだけの困難を乗り越えて、看板商品の「陣太鼓」が復活した時には、社員のみなさんや社長さんは言葉にできないほどの葛藤と喜びと覚悟があったに違いない。
工場が仮復旧し店舗の営業も再開され始めているが、全ての商品が復活したわけではない。まずは看板商品の「誉の陣太鼓」「肥後五十四万石」「銘菓本丸」の3つのみの復活だ。6月20日から販売再開されている。ぜひ、熊本にお越しの際には食べてみて欲しい。
陣太鼓の食べ方
陣太鼓を食べるには正しい食べ方があるのをご存じだろうか?もしかしたら熊本県民の中にも「へぇ、知らなかった」と言う人がいるかもしれないので、正しい陣太鼓の食べ方の動画をご紹介しておく。
6月20日から営業している店舗
<熊本市>
〒862-0909
熊本市東区湖東3-1-8
Tel 店舗 096-367-5338 外商 096-369-7388
営業時間
店舗 9:15-18:15
外商 9:00-17:30
オンラインショップとホームページ
編集後記
社長を含め、社員さんやパートさんたちの自宅も被災し、全壊の方や半壊の方、未だに避難所生活や車中泊をしている方々もおられると聞いている。そんな中でも熊本県民から寄せられる「いつオープンするの?」「陣太鼓、ないと困るのよ」といった声に応えたいという想いで営業再開までこぎつけられた。知れば知るほど感動的で胸が詰まる思いだ。たくさん陣太鼓を買って香梅を応援したいという人も多いのではないだろうか?
最後に、熊本地震発生直後、自身も被災して大変な時期だというのに、熊本県民に対して励ましのメッセージを送ったお菓子の香梅の動画をご紹介しておく。
本記事内で使用しました画像は全て「お菓子の香梅」のHPとオンラインショップが出典です。お菓子の香梅ホームページ / お菓子の香梅オンラインショップ