夏目漱石と行く小説『草枕』の旅:小説の中の世界を歩いてみよう!

熊本市役所に行った時にふと目に止まったこのパンフレット。開いてみると夏目漱石のPR冊子だった。そういえば、2016年から2017年は実は夏目漱石のイベントが全国的に目白押しなのだ。なぜなら、2016年は夏目漱石没後100年の年であり、2017年は生誕150年の節目に当たるからだ。実は夏目漱石は熊本でも生活していた時期があり、2016年は熊本に来てから120年目となることもあり、熊本県や各自治体は必死にPRをしているところだ。さらに、あまり知られていないかもしれないが、熊本は小説『草枕』の舞台なのだ。ということで、今回は夏目漱石に想いを馳せながら実際に夏目漱石が実際に歩いた小説『草枕』の旅路をご紹介。

夏目漱石の歩いた道

山路を登りながら、こう考えた。
智ちに働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。

コース

夏目漱石が歩いた草枕の道は、熊本市西のにある金峰山の麓から2つの峠を越えて、玉名市天水町までの約15kmとされており、所要時間は約4時間半~5時間とされている。

交通センター(バス)→鎌研で降りる→鎌研坂→峠の茶屋公園→石畳の道→野出峠の茶屋跡→前田家別邸(終点)→小天温泉→(バス)→交通センター

 

鎌研坂

出典:徒然なか話

先ほど引用した「山路を登りながら、こう考えた・・・」これは草枕の冒頭なのだが、この鎌研坂(かまとざか)は、その山路の入口だ。漱石がまさにこの場所を歩いた時、感じたことがあの冒頭に書かれているのだ。

 

峠の茶屋公園

出典:デジイチde撮り歩き

草枕の中で茶屋に立ち寄り「おい、と声をかけたが返事がない」と表現された場所がこの場所だと言われている。今は公園として復元されており、茶屋はないが休憩所や売店がある。

石畳の道

出典:ぼくちゃん&相棒のひ・と・り・ご・と

この石畳の道は当時漱石が歩いた面影をほとんどそのまま残しているといわれている。なんとも言えない雰囲気が心を癒やしてくれる道となっている。

野出峠の茶屋跡

出典:デジイチde撮り歩き

先ほどの茶屋と一緒に、こちらも草枕の茶屋のモデルになったと言われている茶屋跡。今は茶屋はなくなっているが、夏目漱石がこの場所からの景色を詠んだ「天草の後ろに寒き入日かな」という句碑が建てられている。ここからの眺めは最高で、特に夕日はすごく綺麗に見える。ちなみに、茶屋は大正11年に解体されたそうだ。

 

前田家別邸

出典:漱石・草枕の里

さていよいよ、草枕の舞台のモデルとなった温泉旅館。 夏目漱石が訪れた明治30年(1897)には温泉宿だった前田家別邸だ。

「那古井の宿」として登場する前田家別邸は木造3階建てで、後ろの斜面にせり上がるように配置された離れが温泉客用の建物となっており、玄関右手奥に半地下の湯殿がありました。漱石が泊まったという部屋は六畳と四畳半の二間で、四畳半の部屋からは、庭を隔てて母屋の廊下が見下ろせます。『草枕』の印象的な描写は、前田家のこの独特な間取りから生まれたもので、主人公が「徘徊する振袖の女」を目にするなど、非日常的な物語の舞台として効果を発揮しています。

くまの素より

 

全長15kmとかなりの長距離だがゆっくりと時間をかけて歩くのもたまには悪く無いだろう。しかも、小説を片手に実際にその小説の世界が目の前に広がるのだから、こんな贅沢は他にないかもしれない。きっと「こころ」も脳も癒やされるだろう。

あ、最後に、夏目漱石の小説『草枕』が無料で読めるので、そちらのサイトを紹介しておく。下記の青空文庫さんで全文読めるので、スマホやタブレット片手にこの散策をしてみてもいいかもしれない。

 

夏目漱石 草枕 – 青空文庫