【対決】熊本の水道水VS市販のミネラルウォーター!勝つのはどっち?

関西でもそうだったが、関東でもそうかもしれない。「水道水は飲めたものじゃない」誰しもが、そう感じたことがあるのではないだろうか?

水道水がまずいから市販のミネラルウォーターを買うという人がほとんどだと思うが、そんな常識に熊本市が果敢に挑戦したのだ。

上記の写真は熊本市役所前にある水飲み場の看板なのだが、水道水の水質に自信満々の熊本市が水道水と市販のミネラルウォーターを成分検査して、どっちがおいしく体に良いのかをはっきりさせようというのだ。

さて、この対決の結果やいかに・・・

熊本市の蛇口はミネラルウォーターなのだ!

熊本市の水道水源は100%地下水

まず、皆さんにご理解いただきたいのは、熊本市の人口は約74万人。

熊本市はそのすべての上水道を100%地下水だけでまかなっているということ。しかも、市内には113本の井戸があり、そこから地下水を汲み上げ、熊本市内全域に配水しているそうだ。そのため、熊本市にはダムや浄水場がないのも驚きだ!

こういうわけで、「熊本市の蛇口をひねるとミネラルウォーターが出てくる」と言われているのだ。

ただ、汲み上げた地下水をそのまま配水しているのではなく、法律で定められた最低限の塩素を加える処理だけしているそうだ。

 

熊本市は世界でも稀な地下水都市

出典:熊本市上下水道局

人口74万人もの大きな都市の水道水をすべて地下水だけでまかなうというのは、普通に考えて驚きだ!それもそのはず、人口50万人以上の都市としては日本で熊本市だけだそうだ。世界的に見てもかなり稀なことだそうだ。

そして、さらに驚きなのは、熊本市だけでなく、阿蘇外輪山の西側のあたりの市町村でも地下水のみで水道水源をまかなっているそうだ。これらの市町村には約30万人が暮らしていて、熊本市と合わせて100万人の水道水源を地下水だけでまかなっていることになる。これはスゴスギル!

 

地下水のシステムができるまで

出典:熊本市上下水道局

そんな大量の地下水ってどうやってできているのか?という疑問が地下水が湧き出るように自然と私の頭に湧いてきた。

調べてみると・・・

1:阿蘇の西麓で降った雨は、川へ流れたり、蒸発したり、森や田畑などから地下へ浸透します。
2:浸透した水は、土と石のすき間を満たしながら浸透し、その間に水に含まれる不純物をろ過し、同時に岩石のミネラル分を溶かし込んでおいしい地下水となって熊本市へ流れてきます。
3:江津湖や八景水谷などで地下水が湧き出ています。水源地の井戸でも、この水をくみ上げます。

熊本市上下水道局HPより

うーん。すごくわかりやすいが一般的な地下水のできる仕組みだった。

そこで、もう少し調べてみると・・・

日本人の平均的な1人1日あたりの生活用水使用量は、約224リットルなのだそうだが、熊本に降る雨は約20億4千万立方メートルというトテツモナイ量の雨が降るのだとか。

そのうち3分の1は蒸発するのだが、3分の1は川に流れ、残りの3分の1が地下水となるそうだ。

計算してみると、
20億÷3=約6億立方メートルとなる!つまり、約6億立方メートルが蒸発し、約6億立方メートルが川に流れ、約6億立方メートルが地下水になるそうだ。

1立方メートルは1000リットルなので、
6億×1000=6000億リットル!!!!

これが毎年繰り返されているのがスゴスギル!

これのおかげで、熊本市は渇水が起こっても断水をしたことがないのだ。

また、ただ雨が多いだけでなく、水が浸透しやすい土壌であることも豊富な地下水を育む要因になっている。阿蘇火山が、約27万年前~約9万年前にかけて4度にわたる大噴火を起こし、その時の火山灰が厚く降り積もってできた土壌は水を浸透させやすい土壌なのだ。

さらに、約420年前、肥後に入国した加藤清正が多くの用水路などを作り治水事業を行った。これが多くの水田を作ることにつながった。水田は通常の土壌よりも水の浸透率がいいそうだが、白川中流域(大津町や菊陽町など)の水田では、通常の5倍~10倍の水を吸収するそうだ。

このトリプルパンチにより、熊本の地下水は豊富になった。

ちなみに、阿蘇外輪で降った雨水が熊本市で地下水として湧き上がるまで、約20年の歳月をかけて磨かれながら運ばれるため、大地の栄養分であるミネラル分や炭酸分がバランスよく溶け込み、おいしく体にやさしい天然水になるのだ。

 

ミネラルウォーターVS熊本市の水道水

出典:くまもとウォーターライフ

熊本市のおもしろいところは、「蛇口をひねったらミネラルウォーター」という標語を考えついただけでなく、実際にミネラルウォーターと水道水を対決させたところだ!アホみたいな対決を大の大人が・・・真面目な行政がやってのけるのだからおもしろい!

しかも、結果がまたすごいのだ!

熊本市の水道水、つまり地下水には、ミネラル分や炭酸分が含まれていることは先ほど述べた。ミネラルの成分といえば、カルシウムやカリウムなどだが、その成分がバランスよく含まれているのだそうだ。実際に市販のミネラルウォーターとの比較をした画像が上記の画像だ。

見てみると、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ケイ酸のどれをとってもぶっちぎりで市販のミネラルウォーターに圧勝しているではないか!

恐るべし熊本の水道水!

 

地下水を守る取り組み

どれだけ地下水が豊富だと言っても、毎年100万人以上が水道水をジャバジャバ使っていたのでは、いつかは地下水も枯れてしまい無くなってしまうのが資源というものだ。現に熊本市でも地下水の水位は減少してきているのだという。そこで、熊本市は地下水を守るための活動を地元団体や企業、県民などと共に取り組んでいるのだ。

熊本市が取り組んでいるのは、節水、水質の保全、交流・連携などの活動は当然のこととして呼びかける他に、もう一つ興味深い活動を企業や各種団体や県民とともに行っている。

それは、田んぼという涵養装置を増やすこと。協力してもらえる農家を探し、稲作を行っていない時期に川から田んぼに水を引いてもらい、地下水涵養し、その費用をいろいろな団体や企業が負担するというシステムだ。

熊本の田んぼは年々減少傾向にあるのだが、通常の5倍~10倍の吸収力を持つ現存の田んぼを利用して、川の水をもう一度地下に戻す活動をしているのだそうだ。そして、その期間の田んぼと水を利用して育てたお米をブランド米として販売するといった活動もしている。

 

水は大切に使おう

自然の偶然と先人たちの努力によってこの豊かな地下水システムは出来上がった。それを400年以上も守り続けてきている熊本の人たちには頭が下がる想いだ。意識せず水を使うと無駄遣いしてしまいそうだが、こういった歴史や事実を知っていくことで、水という資源のありがたさに気づくのではないだろうか。