【くまもと人物百景】<地域おこし協力隊編>天草市地域おこし協力隊「山根 ゆみ」さん

熊本県内の各地域で活躍する地域おこし協力隊の紹介を通して、その地域の魅力を発信していきます。

天草市の地域おこし協力隊、山根ゆみさんにお話を伺いました。

熊本人物キュレーション<地域おこし協力隊編>天草市地域おこし協力隊「山根 ゆみ」さん

天草市とは

天草市は熊本県南西部に位置し、周囲を美しい海で囲まれた天草上島と天草下島、御所浦島などで構成される天草諸島の中心部です。面積は683.87平方キロメートルで熊本県内最大です。

産業は、温暖な気候を活かした農業や豊かな海洋資源を活かした漁業を中心としています。また、自然景観が素晴らしく、南蛮文化やキリシタンの歴史など観光資源にも恵まれている地域です。

協力隊になろうと思ったきっかけ

大阪府出身で生まれも育ちも大阪です。仕事の都合で埼玉に3年間ほど住みましたが、都会の息苦しさとそこで生活していくことへの疑問を感じ移住を考え始めました。

大学卒業後、インバウンドのコールセンターで仕事をしていました。でも、30歳を過ぎたあたりからシフト勤務で夜勤をすることに疲れを感じ始めていました。
ちょうど同じ頃、結婚をして「そろそろ家のこともしっかりしたい」と別の生き方を考え、移住を考え始めました。

東京の有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」に移住相談に行った際、偶然熊本県の移住相談員の方に声をかけていただき、天草市を勧めてもらいました。ちょうど東京で天草市主催の移住セミナーが開催されていたので夫婦で参加してみました。そこで天草市の担当者の方から「1回天草に来てみない?」と誘われまして、夫と一緒に行ってみることにしました。実際に行ってみると、とてもいいところだったので移住を決意し、2017年7月に天草市に移住しましたが、仕事は決まっていませんでした。その時、天草市職員の方から協力隊募集の話をお聞きし、すごく面白そうな仕事だったので応募して今に至っています。

天草の好きなところを教えてください。

私のように他県から来た人を受け入れてくれる住民の方の寛容さです。市役所職員や地域の方も皆さんウェルカムな感じで迎えてくれました。受け入れてくれる人が多いので、天草に来てすごく良かったです。

天草は海がきれいで食べるものも美味しいし、島それぞれで雰囲気も違います。また、世界遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産の一つである「﨑津集落」をはじめ様々な文化遺産もあります。宝の島と言われるほどの沢山の魅力を持っていて、すごくいいところだなと思っています。

協力隊の活動内容

天草産品についての情報収集をしたり、集めた情報をデータ化したりなどです。具体的には、生産者の方を訪ねてどういう商品を作っているのか調査して、集めた情報をSNSで発信したり、データ化したりしています。

また、天草には「天草宝島物産公社」という地域商社があるのですが、そこのお手伝いもさせていただいています。都会にある飲食店やホテルなどに天草の旬のものを紹介する機関紙を発行したりするのが主な仕事です。

協力隊の仕事以外に「うぶ柑」プロジェクトも開始しています。「うぶ柑」とは甘夏のことです。手つかずだった「産島(うぶしま)」という無人島で育っていた甘夏の収穫を15年ぶりに復活させて、無農薬・有機栽培の果物として販売しています。その収益は、「産島」の地元地区に寄贈して地域の行事などに役立てていただいています。

協力隊のやりがい・魅力

以前、東京などの飲食店やホテルの方に天草に来ていただき、生産者の方とマッチングを図るイベントを担当することがありました。生産者の方はそういう機会をあまり経験されていないため、全くやり方がわからないという方々ばかりでしたので、まずはそのような生産者の方々を事前に訪問して、「こういうのが必要なので作りましょう」といったアドバイスなどを行い、商談会当日には「お世話になりました」「すごく良かったです」「次の新しい仕事が見えました」といったお礼を言われた時は、とてもやりがいを感じました。

また、天草の地域に触れて、たくさんのことを知ることができたということは、自らの一番の財産になりました。協力隊の仕事をしていなければ、住んでいる地域や自分に関係のある地域のことしか知ることができず、天草全土のことは全然分からなかったと思うんです。いろんな人に出会え、天草にある資源や食べ物、そして生産者の方々をたくさん知ることができたことは協力隊としての魅力だと感じています。

山根さんが作っている機関紙(2019年冬号)

山根さんが作っている機関紙(2018年春号)

任期中にしておきたいことを教えてください。

天草の生産者の方は自分たちが作っている商品にすごく自信を持たれています。しかし、その売り方がわからなかったり、魅力を発信する方法がわからなかったりしているのを目にしてきました。これまでもいろいろとお手伝いをしてきましたが、情報発信という点ではまだ足りないと思っています。残りわずかの期間、できる限り生産者の方のところに行って、伝え方や情報発信の方法などのアドバイスやお手伝いをしていきたいです。インスタグラムを使って情報発信したり、天草の旬の食材を取引先の飲食店やホテル向けに紹介する機関紙を作成し、渡したりしています。

メッセージ

私はもともと行動力があったわけではありません。協力隊の仕事をする前はすごく不安でした。ただ、地域に溶け込んで何かをするということに興味がありましたので、少しずつ私自身がいろんなところに行ったり、自ら発信したりしてきました。そうすることで、地元のみなさんに温かく受け入れていただけました。だから、協力隊の仕事に対して不安があっても、自分から行動していけばきっと受け入れてもらえます。新しい土地で自分を変えたいと思い行動した結果、今のように力をつけることができました。また、未経験の仕事をすることに対するストレスはありませんでした。大阪や埼玉にいた時は、毎日通勤電車に揺られたりすることがストレスでした。でも、こちらは時間がゆったり流れていますし、自分の時間を持てるようになったので、それがストレス解消になっています。都会での仕事に息苦しさを感じている人にも協力隊の仕事は合っていると思います。