【くまもと人物百景】<地域おこし協力隊編>高森町地域おこし協力隊「染田 麻弓子」さん

熊本県内の各地域で活躍する地域おこし協力隊の紹介を通して、その地域の魅力を発信していきます。

高森町の地域おこし協力隊、染田麻弓子さんにお話を伺いました。

熊本人物キュレーション<地域おこし協力隊編>高森町地域おこし協力隊「染田 麻弓子」さん

高森町とは

高森町は、阿蘇山の南東部に位置します。西側は阿蘇山のカルデラの内部、南郷谷の一角で、JR立野駅と結ばれている南阿蘇鉄道の終点・高森駅があります。東側は阿蘇外輪山の外側にあたり、東は大分県、南東部は宮崎県に接しています。
南阿蘇の豊かな山野に囲まれているため、観光農園やペンション、キャンプ場が点在しています。地元の野菜や山菜、手作りの漬物、ハムなどを販売する物産館も数箇所あり、料理は「高森田楽」や地鶏の炭焼きなどが有名です。

地域おこし協力隊になったきっかけ

私は、宮崎県出身で、大学卒業後3年間はNHK宮崎放送局の制作部で働いていました。その後、実家の農園で研修をはじめ、宮崎観光大使として1年間活動していました。その時にラジオ出演した縁で、後にディレクターさんから声をかけられ、農業を営みながらラジオパーソナリティとしても活動していました。

2018年に高森町の地域おこし協力隊となり、今年で2年目となります。もともと、まちづくりや地域おこしに関心がありました。私が中学~高校時代に学んだ学校がふるさと教育に力をいれていて、そこで地域づくりへアツい想いを持つ方々に出会ったのがきっかけですね。ちょうど平成の大合併が行われている時期で、まちづくりや一村一品運動などのブームもあり、そこからずっと大学時代も地方自治について勉強していました。

放送局で働いていた時も、地域の魅力を発見し発信する番組を担当していたので、地域づくり活動をしている人達と関わることが多く、放送局を退社して実家で働き始めた後は、今度は自分自身がまちづくりに関わる活動をやっていました。

そんな中、FM宮崎のラジオで活動していた時に、ゲストとして地域おこし協力隊の方がPRでいらっしゃって、その時に協力隊の制度を知ることになりました。それから、協力隊に興味がわきネットで探してみたんです。ただ、実家の農業を一緒に手伝っていて、両親も心配だったので、なるべく実家から離れず帰りやすい距離がいいと思っていました。高森町は実家から2時間ほどで、熊本地震からの復興というテーマでやりがいもありますし、他のところと比べて条件も良かったので、高森町の協力隊になろうと決めました。

協力隊の活動内容

私のミッションは、南阿蘇鉄道の復興支援です。2016年の熊本地震で被災した南阿蘇鉄道は、全線復旧へむけて工事を進めながら、トロッコ列車や普通列車を部分運行しており、そもそも人手が足りていない状況です。そのため、基本的に高森駅にてお客様対応や電話対応、売店の対応、さらに切符の販売や予約の確認・受付など一般的な駅の業務を担当しています。

その業務と並行して、いろいろなプログラムを企画しています。復興現場をご覧いただけるツアーや、地元の小学生に南阿蘇鉄道を通してふるさとのことを学んでもらう授業、旅行会社と共同でレールウォークを企画してガイドをしたり、連休には家族で楽しめる観光列車など、いろんな体験プログラムを企画したり、広報から運営まですべて行っています。

企画を得意と思ったことはないですが、現状からどういう企画が必要かなというプロセスで自分なりに組み立てています。

もともと、鉄道は全然興味がなく、南阿蘇鉄道の存在すら知らなかったので、最初は南阿蘇鉄道を知ることから始めました。歴史を知り、被災後の現状把握をした上で、今何が必要か、自分は何をしなければいけないのか、という課題設定をして、その課題解決のための企画を考えています。

企画のアイデアを出して、それを素早く確実に実施するというのは、放送局に勤めていたときの経験が活かされていると思います。何かネタはないかと常にアンテナを張って、すぐに取材に行って、それをまとめて番組にするということをやっていたので。

その時は放送日という締切が絶対で、ギリギリなのにボツやダメだしを食らいながら、それでもどうにかしなきゃととにかく必死でしたが、その経験から思いついたらパッと行動に移すことが身についたと思います。

協力隊のやりがい・魅力

地元の人との交流を大事にしたいと心がけています。普段のあいさつや飲み会ももちろん、祭りや地域イベントなどにもできる限り参加したいですね。

協力隊になってみて、最初は鉄道ってこんな人数でも動かせるのかと思いました。あと、とにかく安全第一なんだと。協力隊になるまでは本当に知らない業界だったので、新鮮に感じました。

南阿蘇鉄道では、管理職から現場の運転手さん含めて、全部で9人が働いています。それに地域おこし協力隊のメンバーが、私を含めて5人。私が協力隊として着任した時は、現場を6人くらいで回しているような感じでした。

私が来た時は本当にてんやわんや状態でした。トロッコ列車シーズンはお客さまも多いし、問い合わせの電話もひっきりなしで。そんななかの着任でしたので、現場のみなさんに「やっときてくれた」と歓迎ムードで迎えてもらえました。これは頑張らなければ、と思いましたね。

それに対して、プレッシャーはありませんでした。私がやること、仕事として何をやらなければいけないのかということが明確で、悩むことはそんなになかったので。忙しく充実して仕事をさせていただいています。

お客様にすごく喜んでいただいた時にやりがいを感じます。企画したツアーやプログラムに参加したお客様から、笑顔で楽しかったと言ってもらえたり、お礼の手紙をもらったりすると、嬉しいです。

また、企画の実施には運転士などの職員さんの協力も必要になりますが、「この企画はいいね」とか「おかげでお客さまが増えた」と声をかけてもらえたり、企画の相談にのってもらえたり、みなさんとても積極的に協力してくださるので、考えた企画がより高いクオリティで実現しやすく、そういう面でも非常にやりがいがあります。

今後の展望として、まちづくりに関係する仕事をしていこうと思います。
例えば観光協会などのお仕事やツアーガイド、まちづくりコンサルティング関連会社など色々ありますが、ひとつに決めずにフリーで色々とやっていきたいです。

また、「まちづくりは、ひとづくり」とよく言われるように、教育の面からもまちづくり活動をしていきたいです。

メッセージ

協力隊は、自分のやりたい事を実現する仕事ではなく、その場所で求められていることを自分のスキルやアイデアで形にしていく仕事だと思います。求められていることは、やって喜ばれること。活動内容が自己満足にならないように注意する必要はあると思います。

ただ、新しい場所に行って、住んで、働いて、その土地の人たちとのつながりを持つということは、自分にとって大切な人と大切な場所が増えるということです。自分という人間の幅が広がる得難い経験だと思います。

求められていることを一所懸命にやっているうちに、全然知らなかった場所、縁のなかった場所が、自分にとって縁のある大切な場所になっていくというのは、すごく面白いし、素敵な仕事だなって思いますね。

高森町の魅力はたくさんあるんですが、まず住民の皆さんが魅力の一つです。トロッコ列車に乗ったら地元の人が手を振ってくれるんですよ。それも旅の一つの思い出になるでしょう。

また、よくご自宅に招待してくれる高森町のお父さん、お母さんと呼べるような方がいらっしゃるんですが、いつも心のこもったおもてなしをしてくれて、今年の誕生日はそのご家族に祝ってもらいました。ほんとうにあったかい人ばかりですので、そういう方々とぜひ触れ合ってほしいです。

そして、なんといっても阿蘇山。春から夏の緑の阿蘇山も綺麗でいいんですが、冬の阿蘇山は特にカッコいいです。岩肌や山の表情がよく見えるんですよ。早朝、朝日に照らされた阿蘇山は神々しく、思わず手をあわせたくなります。他の場所にはない景観が高森町の大きな魅力のひとつですね。それとお酒もとってもおいしいです!

最後に、やっぱり南阿蘇鉄道です。全線復旧を予定している2023年夏まで4年弱ありますが、現在もトロッコ列車をはじめ様々な企画列車などを部分運行しておりますのでぜひ遊びに来てほしいですね。お待ちしております!