くまもと復興国際音楽祭の企画者はなんと中学校の理科の先生だった!音楽祭にかける深い思いとは?

くまもと復興国際音楽祭2021

熊本県内で、2021年9月30日(金)から、大きなクラシックの祭典「第1回 くまもと復興国際音楽祭」が開催されます。

有名なオーケストラや指揮者、演奏家が集結し、熊本県内の様々な会場でクラシック音楽を奏でます。

かなり大きなイベントなので、企画されたのはクラシック専門の方だろうと思いきや、なんと熊本市内の中学校の理科の先生だというのです!

なぜ、理科の先生がクラシック音楽祭を企画されたのかとても興味をもち、企画された坂本一生さんにお話を伺うことになりました。

お話を聞いてみると、この音楽祭への先生の深い思いが分かってきたのでした。

くまもと復興国際音楽祭について

くまもと復興国際音楽祭2021

「くまもと復興国際音楽祭」はもともと2020年にも開催予定だった音楽イベント。

しかし、新型コロナの影響で延期され、ようやく今年、開催されることになりました。

マスク着用し、新型コロナ感染症対策をした上でインタビューに応じていただきました。

 

-今回の音楽祭を企画したきっかけについてお聞かせください

きっかけは熊本地震でした。

あの時、避難所の体育館や仮設住宅を回って演奏する活動をしたり、炊き出しコンサート、復興祈念コンサートをしていく中で「音楽の可能性をもっと多くの人に届けたい!」「音楽の素晴らしさをもっと広めたい!」と思うようになったのがきっかけです。

そういう思いを抱えて活動をしていた時、熊本市との交流都市であるフランスのエクス=アン=プロヴァンスの方に「交流都市なので音楽祭があれば合流しましょう」と言っていただきました。

2年に1回、日仏自治体交流会議が開催されています。
会場はフランスと日本で交代となっていて、2018年は熊本が会場でした。

そこにはエクス=アン=プロヴァンスの方も来られていました。
私は、その場でナンシーという街の市役所にお勤めされている日本人の方と知り合ったんです。
そして、その方から「音楽をやるんだったら、エクス=アン=プロヴァンスともつながったほうがいいですよ」と言われまして。

その後、その方が市役所どうしをつないでくれ、私が音楽関係者にお会いしたいと伝えたところ、市役所経由で向こうの音楽祭事務局長とお会いすることができました。

それ以降、会話を重ね、熊本のメディアや文化協会会長、県や市などと協議し、開催するまでに至ったわけです。

しかし、2020年は新型コロナの影響で延期になってしまいました。

今年ようやく開催できるところまで漕ぎ着けることができました。
ただ、2020年に予定していた演奏者や演目などとは変更されています。

理科の先生がクラシック音楽祭を企画しようと思うまでに至ったルーツとは?

くまもと復興国際音楽祭2021

-坂本さんは中学校の理科の先生ですが、一見関係なさそうなクラシック音楽に関わることになったきっかけはなんだったのでしょうか?

中学校の時に音楽の授業で鑑賞の時間が度々あって、その時に聴いたクラシック音楽がなんかいいな〜と思って。そのなかで聴いたベートーヴェンの曲がすごくよかったんです。そこでクラシック音楽が好きになりました。

-そこからどのようにして音楽祭を企画するまでに至ったのでしょうか?

中学生の時にクラシック音楽が好きになって、そして高校生の時にチェロを始めて。大学時代には学生オーケストラに所属していました。

この時、その後の音楽人生を変える転機がありました。

大きな転機となったのは、大学3年生、21歳の時に貧乏旅行でヨーロッパに行った時に出会った人です。

そこで、現NHK交響楽団の第一コンサートマスターである篠崎史紀さんと出会うことになったんです。彼は福岡の北九州出身なんです。私は熊本出身なので同じ九州出身だということで、それ以降ドライブに行ったり、コンサートに行ったりといった間柄になりました。

その時学生だった彼は、帰国後に群馬交響楽団のコンサートマスターなど日本で仕事をするようになり、年に何回か彼を呼んでコンサートを開いたり、教えてもらったりなどしてもらうようになりました。

そんなことをやっているうちに、私自身も「オーケストラ創造」というNPO法人を設立し、2006年から熊本でプロオーケストラを作ろうという運動を始めることになり。

その10年後に熊本地震が発生しました。

その時に、避難所である体育館や仮設住宅などを回って、被災者の方々に向けて演奏する活動を始めたわけです。篠崎さんが一緒の時もありました。

さらに、復興記念コンサートとして、2017年〜2019年に3回の大きなコンサートも開催しました。

このコンサートが発展する形でつながったのが、今回の「くまもと復興国際音楽祭」です。

坂本先生のくまもと復興国際音楽祭にかける思いとは?

-熊本でプロオーケストを作ろうと思ったのはなぜでしょうか?

2006年に仙台で仙台フィルというプロオーケストラの演奏を聴く機会がありまして。その時の演奏が本当に素晴らしかったんです。それは、地元のオーケストラだったからです。

仙台フィル以外にも素晴らしいオーケストラはたくさんありますが、仙台フィルは上手に楽器を弾くだけというわけではないんです。そこには応援するような温かい空気と地元ファンに答えようとする演奏がありました。

そういうメッセージ性に素晴らしさを感じ、これこそ音楽の醍醐味だなと感じたわけです。

その後、熊本に帰り、熊本にもそういうプロオーケストラができることによって、本物の音楽の交流ができるのではないかと思い始めました。それがきっかけでプロオーケストラを作ろうということになりました。

-この音楽祭に対する思いをお聞かせください

一生に1回は良いコンサートを聴いてみるといいと思っています。美味しいラーメン屋があるから、1回食べてみるといいよというのと同じ感じです。

1回聴いてもらって人生の楽しみを増やしていって欲しいです。一生に1回になってしまう人もいるかもしれませんが、人生を豊かにするために、コンサートを聴きにいくこともぜひやっていただきたいです。

クラシックなんて関係ないと思って一生を終わらせたらもったいないです。

このくまもと復興国際音楽祭は、その良いコンサートの一つになるはずです。

くまもと復興国際音楽祭2021

第1回 くまもと復興国際音楽祭について

-最後に9月30日から開催される「くまもと復興国際音楽祭」についてご紹介ください

コロナ禍で当初予定していた形とはだいぶん変更になっています。指揮者のケント・ナガノさんは参加していただけないことが確定しています。

また、鑑賞されるお客さんの数も少なくなります。

ただ、感染対策は万全の上で開催しますし、お客さんが少ないということで密にはなりませんので、安心して聴いていだだけたらと思います。

二度と聴けないようなコンサートになることは間違いないです。

ケント・ナガノさんからのメッセージ

今回は、残念ながらコロナの影響のため、来日することができなくなってしまったケント・ナガノさんからのメッセージも坂本先生の元へ届いたようなので、併せて掲載させていただきました。

まとめ

くまもと復興国際音楽祭2021

インタビューを受けて、すごくパワフルで純粋な方だという印象を強く受けました。

今まで音楽が好きな人にもたくさんお会いしましたが、これほどまでに真っ直ぐに音楽が大好きな方は初めてお会いしました。

みなさんにはぜひ会場で坂本先生の情熱と音楽家さんたちの情熱のぶつかり合いを肌で感じていただければと幸いです。