熊本あさぎり町の高校生が復活させた球磨の伝説の“南稜米”が育む若者の未来とは


熊本の人は、ホントに地元が好き。

その「好き」という気持ちが、熊本の伝統や文化を支えています。

熊本の米どころのひとつ、球磨地方。
「無農薬米」として、球磨地方ではその名が知られる“南稜米”。

南稜米を作っているのは、地元の南稜高等学校の食物専攻科の生徒さんたち。

生徒さんが初めて、自分たちで作ったお米をお客様に対面販売する機会を覗いてきました。

熊本の農業を支える地元愛。南陵高校生による試食販売会

熊本「米」事情

生産データ

熊本は全国的にも農業の盛んな土地柄。

農林水産省の調べ(平成28年)では熊本の農業産出額は全国6位です。

※ちなみに……1位は北海道で、3位に鹿児島、5位に宮崎と、九州勢は上位にランクインしています。

そう! 熊本はなかなかの農業県♪

おいしいものがたくさんあるわけね♪

熊本の農産物の中でも、お米のおいしさは、全国的にも高い評価を得ています(^^)

 

球磨地方のお米

熊本県では、ほぼ全域でお米が作られています。

収穫の早い順に見てみると……

まず、比較的温暖な天草からは早期米「コシヒカリ」が夏の終わり頃から収穫され始めます。

追って、平坦地の七城などが続き、その後は高冷地である阿蘇の出番。

そんな熊本のお米の中でも、もっとも収穫が遅い県南部の球磨地方は、日本の一級河川にも選ばれる、球磨川の恩恵を受けた水を原料とする米焼酎(球磨焼酎)が全国的にも有名!

つまり、米焼酎がおいしいということは、お米がおいしいということ!

そんな米どころのひとつ、球磨地方には、人気のある「森のくまさん」をはじめ、お米のブランドがたくさんあります。

“南陵米”も、そんな球磨地方で学生の手によって誕生したお米です♪

 

球磨ブランド“南稜米”

こだわりの復刻米

球磨郡あさぎり町の熊本県立南稜高等学校。

作物専攻科の生徒さんたちは10数年前から学習の一環として無農薬・無化学肥料栽培にこだわる米作りに取り組んでいます。

田植えの様子

田植えの様子

温湯消毒の様子

稲刈りの様子

栽培している品種のうち、「南稜米〜旭一号〜」と名付けられたお米は、100年前は庶民の間では主流のお米だったもの。

手間の割に収穫量が少ないことから、当時の需要と合わなくて、戦後頃からだんだんと栽培されなくなったとのこと……。

その伝説の?お米を南稜高校の生徒さんが地元農家の方々の協力を得ながら復刻させたのが「南稜米〜旭一号〜」。

昔の庶民に愛されたお米! 注目のお米よ!!

そのほかにも、何種類のお米を作っていて、普段は電話注文に応じて、全国からの「指名買い」のお客様に発送をしているそうです。

 

初めての試食販売会

11月17日(土)……快晴?

南陵高校の生徒さんにとって、初めての対面販売の機会です。

今までは……同校の文化祭や地元での展示会など「南稜米を求めて」お越しになるお客様には
販売をする機会があったそう。

今回のように、一般の方が行き交う、公共の場での対面販売は初めての経験!

ワタシが覗いたのは販売開始直後。

まだ……ぎこちなくて、緊張の面持ち。

ただ、販売ブースには、通り掛かりのハートフルな方々が次々と立ち寄ってくださり、

「どりゃどりゃ、試食してみるばぃ」

「頑張ってや。ひとつ貰って帰ろうかね」

あたたかいお客様に声を掛けられながら時間を追うごとに……生徒さんたちからも、素敵な笑顔が溢れていたわ♪

 

地元の農業を支える地元愛

学生の就職先

試食販売会に参加した生徒さんたちは高校3年生。

もうこの時期にもなれば、みなさん、就職先はほぼ決まっているとのこと。

4月からは何をするのかしら?

「看護師になります」

「運送屋をやります」

「自動車整備の仕事に就きます」

おや???
みんなー、農業はやらないの???

「就職してからは、自分ではお米を作る機会はいったんなくなると思います。でも……」

でも?

「今年のお米の出来はどうかな?とか、ずっと毎年、すごく気にしながら生活をしていると思います(笑)」

お話を聞いた生徒さんたち、みんなが必ず最後に付け加えていた共通の言葉があります。

「地元(球磨)で暮らし続けたい」。

 

米づくりがもたらすもの

引率の先生にもお話を聞いたわ。

「食物専攻科の生徒たちは米作りを通じて、自ら苦労して作り上げたものには自信が持てる、自信を持つためには苦労が必要だ、という、これからの将来に基礎となる考え方を養ってもらえていると思います」

「学習の場で、お米を作って終わりではなく、今日のように社会の皆様とのふれ合いの中で挨拶や言葉遣いなど、社会人としてのマナーを考えるきっかけが得られましたことは大変貴重な機会です」

お米作りという、地元の伝統産業は農作物の供給面以上に、地元の若者の成長に大きな糧となる役割を担っているのね。

 

まとめ

全国的な例に漏れず……熊本でも農業の担い手の不足、減少は否めません。

それでも、農業技術の向上や品種改良の成果もあり、熊本の農業は元気です。

その元気の源は……「地元が好き」という、地域を支えようとする、地域の方の地元愛。

地元が好きだから、地元の産物を、もっともっと、県内外の方々に知ってもらうために、地域全体で農業を盛り上げようと頑張っています。

そんな地元愛と、熊本のたくましい“農力”を今回、南稜高校の生徒さんからも確かに感じることができました(^^♪

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